- コトリンゴ「恋の気配」
- KIRINJI 「恋の気配」歌詞&コード
- オノマトペの力、ヒュルルル
- 揺れる心模様「行ったり来たり」
- 「風立ちぬ」秋でなければならぬ
- 気づいたらそこに「気配」
- 兄の口笛が聴ける、ライブ盤「恋の気配」
- 結論
コトリンゴ「恋の気配」
前回の記事でとりあげたコトリンゴの「 悲しくてやりきれない 」が良かったので、やはりコトリンゴが歌っている、でもKIRINJIのクレジットで「恋の気配」をどうぞ。これ、公式動画じゃない、この動画ですら!めちゃめちゃ音がいいんで驚きました。いい意味で造り込んでいる音源が異次元なのでしょう。堀込プロダクションの音職人ぶりをとくとご堪能あれ!
KIRINIJ「恋の気配」

2019/07/04 Top Dawg
とくに前奏、「タンタンタンタン タラタンタンタン…」がやばいヴァイブ。夕闇にまぎれてヒタヒタと静かに満ちてくるような。ぜひハイクオリティなイヤホンで聴くことをおすすめします。わたしのおすすめはBOSE QC20です。
間違えてコンビニで買った1,000円イヤホンで聴いたら、前奏の最初の方、聴こえなかったです。これは本当です。実はエコノミー重視のイヤホンは、音が半分も聴こえていないのです。イコール人生の損失。
しかしその”損失”さえも資産に変えるマジカルな感性の方もいらっしゃいます。興味のある方はどうぞ。
なお、イヤホンについては別稿にて特集を準備中ですので乞うご期待!
KIRINJI 「恋の気配」歌詞&コード
作詞・作曲 掘込高樹
前奏
C#m タンタンタンタン
D#m タラタンタンタン
B タンタンタンタン
F# タンタンタンタンC#m タンタンタンタン
F# タラタンタンタン
B タンタンタンタン
C# タンタンタンタンAmaj7 タンタンタンタン
G#m7 タラタンタンタン
Emaj7 タンタンタンタン
Gm7 タンタン A タンタン A#m7Amaj7 タンタンタンタン
G#7 タラタンタンタン
Emaj7 タンタンタンタン
F#m7 タンタンタンタンAメロ
Amaj7 秋は G#7 夕暮れ
Emaj7 恋は D# 気まぐれ
Emaj7 嘘は G#7 優しい
Emaj7 でもD#嘘 なら罪ですBメロ
Amaj7 風立ちぬ G# ヒュルルララ
Emaj7 鳥が渡る Emルルルル A#m
Amaj7 黄昏れに G#7ラララララ
Emaj7 枯れ葉と踊 D#m7 る C#m7 ルルルAメロ
Amaj7 どこかで G#7 金木犀
Emaj7 香りが D# 重いね
A恋の G#7 気配を
Emaj7 消し去って D# しまうほど
Bメロ
Amaj7 風立ちぬ G# ヒュルルララ
Emaj7 鳥が渡る Emルルルル A#m
Amaj7 黄昏れに G#7 ラララララ
Emaj7 枯れ葉と踊 D#m7 る C#m7 ルルル(ダフトパンク的な?ボーカル)
F#m7 the sign of love is fading away
F#m the sign of love is fading away
G#m7 the sign of love is fading away
C#m7 the sign of love is fading awayF#m7 the sign of love is fading away
F# the sign of love is fading away
G#m7 the sign of love is fading away
C#m7 the sign of love is fading away
Cメロ(ブリッジ)(コーラス)
Amaj7 秋の日は短い
G# 7瞬く間にくれる
Emaj7 ほら太陽は坂道を
F# 転げ落ちる林檎Amaj7 日に日に影は長く
G#7 日に日に影は長く
Emaj7 昨日とは違う
F#7 光の中にいる
Bメロ
Amaj7 風立ちぬ G# ヒュルルララ (今はもう)
Emaj7 鳥が渡る Em ルルルル A#m
Amaj7 黄昏れに G#7 ラララララ
Emaj7 枯れ葉と踊 D#m7 る C#m7 ルルルAmaj7 風立ちぬ G# ヒュルルララ
Emaj7 鳥が渡る Em ルルルル A#m
Amaj7 黄昏れに G#7ラララララ
Emaj7 枯れ葉と踊 D#m7 る ルルルAメロ
F#m 落ち葉を G#7 踏みしめ
G#m7 冬へと F#m 向かうの
Amaj7 愛を F#7 拒んで
C#m7 いるわけでは C#m ないけど
この歌の持つ、日本歌謡ならではの表現に迫ってみます!
オノマトペの力、ヒュルルル
この歌の際立った特徴は、なんといっても”擬音”(オノマトペ)です。
風立ちぬ ヒュルルララ
鳥が渡る ルルルル
黄昏れに ラララララ
枯れ葉と踊るルルル
狭い意味でのオノマトペっていったら、最初の「ヒュルルル」のみ、なんです。でも、そのあとに続く「ルルルル」も「ラララララ」も、擬音の延長線上にある、ラップでいうと韻を踏んでいるような表現で、とても印象的です。
「ヒュルル」と聴けば、有名な曲が日本にはあります。
NHKみんなのうた「北風小僧の寒太郎」
「ひゅーひゅーひゅるるーんるんるんるんーーー」っと思いっきり「さむうござんす。ひゅるるるるるるん」♪
この曲聴くと、宮沢賢治の「風の又三郎」とか思い出して、宮沢賢治といえば言わずと知れた初代オノマトペ総理大臣。しかし、ミヤケンにまで話が及ぶときりがないので今回はふれませぬ。
森昌子 「越冬つばめ」
この歌も忘れてはいけません。
「ひゅーーーーるりいいいいいい、ひゅーーーーるりーーララーーーー」♪
って書きましたが、オノマトペって別に日本語の専売特許ではございません。英語のオノマトペについては下記をご参照ください。
揺れる心模様「行ったり来たり」
開いた音 VS 閉じた音
風立ちぬ ヒュルルララ
鳥が渡る ルルルル
黄昏れに ラララララ
枯れ葉と踊るルルル
あなたが大好きな「ラララ」な気持ちと、
戸惑ってしまう「ルルルル」な気持ちと。
「LALALA」と開いた「あ」の音と「LULULULU」と
閉じた「う」の音が交互に展開しているのもミソです。
昨日まで二人は友達だったんだ「ららら」なのに、
え?実はわたし、その人のことばっかり考えて「るるる」っとな。
そんなわけないでしょわたしった「ラララ」、
でもやっぱり恋して「るるる」?? え゛ーーーー!
ようこそ、「恋の気配」の世界へ。
明るいコード VS 暗いコード
Amaj7 風立ちぬ G# ヒュルルララ
Emaj7 鳥が渡る Emルルルル A#m
前奏の「タンタンタンタン…」含め、コード進行は基本このパターンです。
明るいメジャーとマイナーが交互に繰り返すところも、なんとも移ろう揺れるココロです。個人的には、特に2小節目の「G# ヒュルルララ」感じが切なくていいなと思います。ハァ…って感じで物憂い!
このコード進行を繰り返しつつも、4小節目のEmはD#、F#m、C#とやたら変わっていきます。パターンは踏襲しつつも、飽きさせない戦法。さすがでございます。
「風立ちぬ」秋でなければならぬ
ヒュルルも目立ちますが、なんといっても歌詞で印象的なのは
「風立ちぬ」!ですよね。
「風立ちぬ」といったら、教科書的には「堀辰雄、もしくは ポール・ヴァレリー」が正解!なのですが、動画的には、やはり宮崎アニメとなります。テーマ曲に使われた荒井由実(松任谷由実)の名曲「ひこうき雲」も、なんとなく”秋”のとても高い空を思い浮かべてしまいます。
映画『風立ちぬ』から「ひこうき雲」荒井由実
作詞:荒井由実、作曲:荒井由実

『風立ちぬ』予告編特別フィルム 4分13秒
2013/07/20 c22mmt7yy
「そら~おおお、かけてゆく」♪
今知った情報ですが、この部分のコードでユーミンの旦那は結婚を決めたって?!
夫である松任谷正隆は、この曲のサビ部分(空を〜かけてゆく〜♪)のコード使いの意外性に驚き結婚を決めた、と冗談交じりに語っている(普通なら Gm7→B♭7→A♭M7 がセオリーであるが、中央部のB♭7 をやめ、B♭m7 を選択している)。
まじすか?
コードで結婚きめるもんなんすか?! じゃーこのブログで歌詞にペタペタ、コード貼り付けることにも、なにか意味があるかも。いざコード書きめやも!
それではその部分を「好きなだけ、リーリプレイ!(三浦大知の声で)」
Eb空に Gm 憧れて Cm
Gm空を 駆 Bbm けていく Abmaj7
おおおお、このBbmの部分、まさにいわゆる「ユーミン節」のコードですね。この彼女の特徴的である高音を、メジャーでなくてマイナーにのせるからこそ、ビタースイートな切なさと独特な洗練さが伝わるのでしょう。
こちらも有名な曲、ずばり「風立ちぬ」。
松田聖子「風立ちぬ / Never Ending Wind」 ロニー・スペクター版
作詞:松本隆、作曲:大滝詠一

風立ちぬ / Never Ending Wind [日本語・英語歌詞付き] ロニー・スペクター
2016/08/28 MrMoonligtt
これは分かりやすい歌詞だなぁ。
「風立ちぬ→今は秋」
とにかく風が立つのは秋なんですね。
秋は押しの季節?
ここまで秋にこだわるのは、「いま~わー、秋!」ってことが言いたいのではもちろんありません。そんなの、”秋特選お土産いっぱいバスツアー”にお任せすればいいのですから。
そうではなく、秋=移り行く心のメタファー、なのです。
(そんなの、お前に言われんでも分かっとるわ!とお思いでしょうが…)
で、「恋の気配」に戻ります。
この歌も、いささかうざいほど秋押しのフレーズをてんこ盛りにしております。
秋、夕暮れ、風立ちぬ、鳥が渡る、黄昏れ、枯れ葉と踊る、金木犀…
わーたー、わーた!秋だよね。秋なんだよ!
そこまで秋に持っていきたい理由は一つ。
歌い手であるヒロイン(演者・コトリンゴ)を落としたい、男(演者・KIRINJI兄)の下心、ゆえです。
時系列順に言うと下記のような流れでしょう。
春=淡い遭遇、すれ違い
夏=いろいろすったもんだ、ケンカとか
秋=え?これって…と「恋の気配」に気づく(気づかせる)↓
冬=真の恋人同士完成
ゆえに、秋というシフト・チェンジの季節(舞台)が最も重要なのです。
で、なんか、うだうだしている女に対して、後半、後ろから覆いかぶさってくるのが兄のコーラスです。
Cメロ(ブリッジ)(コーラス)
秋の日は短い=恋せよ乙女?
瞬く間にくれる=急げよ乙女!
ほら太陽は坂道を=坂道効果発動
転げ落ちる林檎=落ちるのは早い日に日に影は長く=煽り
日に日に影は長く=脅し
昨日とは違う=催眠術
光の中にいる~~!=宗教?
なんて、書いてしまっておりますが、本当は実にこのコーラスのかぶり方素敵やねん! ロマンス詐欺風なとこが、なんとも。その前のダフトパンク風コーラス(the sign of love is fading away)は、何言ってんだかよくわかんないんだけどさ。(それもまた詐欺の前振り戦術かもしれないけど)。
気づいたらそこに「気配」
控えめの美学、っていうんでしょうか。この表現には驚きました。
Aメロ
どこかで 金木犀
香りが 重いね
恋の 気配を
消し去って しまうほど
金木犀の香り>恋の気配
って、どんだけ控えめなの⁈ いやいや、それこそが「けはひ」なのです。
「けはひ」なので、気づいたときはもう、そこにある。不意打ち感があります。ほとんど”もののけ”であり、”ステルス”その狡さ(誉め言葉)がなんとも兄といった感じです。
気配=現在(察知力)

無料/FREE 背後に出現する気配 恐怖・ホラー 効果音 Sign of Ghost Free Sound Effect
1,109 回視聴•2017/04/14
Necobido Sound Productionねこびっドーサウンド制作
これが「恋の予感」だと、「ひょっとして、これから?」って感じで、歌においては、(気配に比べ)安定のメジャー感があります。
予感=未来(予知力)

予感・予知(効果音)Presentiment Sound Effect
3,078 回視聴•2014/06/01
Necobido Sound Productionねこびっドーサウンド制作
ここで「恋の予感」ということで、安全地帯→井上陽水の道へ進んでしまうと、もう二度と戻れなくなってしまう"予感"(気配ではない)がするので、踏みとどまります。
最後はツンデレっぽく
で、最後ですが、歌い手の女性は態度をはっきりせず終わります。
落ち葉を 踏みしめ
冬へと 向かうの
愛を 拒んで
いるわけでは ないけど
これも、なんか日本の恋歌っぽいです。はっきりせい!いいえ、しないんです。そもそも「けはひ」だからね。金木犀より軽いからね。拒んでなければいいんじゃないの?
兄の口笛が聴ける、ライブ盤「恋の気配」

KIRINJI】恋の気配 LIVE コトリンゴ
100,787 回視聴•2019/06/05 コント大河ドラマ
最後になりますが、ライブ盤もどうぞ。兄の口笛が絶賛されています。秋、口笛…やはり押してます。
結論
移ろいゆく季節と気持ちの美学をうたう「恋の気配」は、もののあはれ。
KIRINJI「恋の気配」はこちらに収録されています
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tokyocabin